逮捕から58年、元死刑囚の袴田巌さんの無罪が確定しました。えん罪を訴える袴田さんは再審を求めてきましたが、再審開始まで40年以上かかりました。”開かずの扉”といわれる再審制度の問題点を手作りフリップで解説します。
■戦後5例目 死刑から無罪のえん罪事件
死刑判決が確定したあとに、再審で無罪となった人はこれまでに4人います。免田栄さん(当時23歳・無罪判決まで34年)、谷口繁義さん(当時19歳・無罪判決まで34年)、斎藤幸夫さん(当時24歳・無罪判決まで29年)、赤堀政夫さん(当時25歳・無罪判決まで35年)です。
いずれも20年から30年以上、死刑の恐怖におびえながら拘置所で過ごしました。
そこに今回、袴田巌さん(当時30歳)が加わりました。
■ボクサーとして日本記録を持つ袴田巌さん
袴田さんは20代の頃、プロボクサーとして活躍。1年間で19試合という日本最多記録をいまも持っています。
逮捕されたのは30歳の時。それから58年。88歳になってようやく無罪を勝ち取りました。
国際人権団体のアムネスティー・インターナショナルは「世界で最も長く拘束された死刑囚」としています。
■捜査機関が“捏造した”重要証拠
静岡地裁は、死刑判決のカギとなった重要な証拠を、捜査機関による捏造と認定しました。
事件発生から1年2か月後に、現場近くのみそタンクから「5点の衣類」が見つかったとされていました。
注目は、付着した血痕に残る赤み。判決では「1年以上、みそに漬けられた場合、赤みは残らない」と判断。
「捜査機関によって血痕をつけるなど加工され、タンク内に隠されたもの」としたのです。
衣類の中にあったズボンですが、警察はすそ直しをした残りの切れ端が、袴田さんの実家から見つかったと主張。これを根拠に、衣類は袴田さんのものだとしましたが、この切れ端も「捜査機関によって持ち込まれた」と判断しました。
■“開かずの扉” 再審制度の問題点とは
今回の事件で改めて問われているのが、“開かずの扉”といわれる「再審制度」のあり方です。
袴田さんは再審請求から再審開始まで、実に42年間もかかりました。その主な理由が「証拠開示の制度がない」ことです。
いまの制度では、検察は「有罪」に有利となる証拠だけを裁判所に提出すればよく、「無罪」につながる不利な証拠を出す必要はありません。
袴田事件でも再審請求の際、弁護団は”裁判所に提出されなかった証拠”の開示を求めてきましたが、検察は「開示する法的根拠がない」として拒否していました。
2回目の再審請求で裁判長が提出を強く勧告したことを受け、2010年になってようやく開示されたのです。
そのなかに、今回の無罪判決の決め手となった「5点の衣類」の鮮明なカラー写真が含まれていて、再審の扉が開かれたのです。
日本弁護士連合会は、再審法を改正し、“証拠開示のルールづくり”などを求めています。
袴田さんの姉・ひで子さん(91)は10月8日、「私は巌だけ助かれば良いと思っておりません。再審法改正には大いに協力してまいりたい」と語りました。
えん罪被害を少しでも減らす取り組みが求められています。
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